八女伝統工芸館2F 常設展示この御仏壇は当時、福島仏壇組合の7代組合長であった高橋篤氏の要請により、個の業者ではなく福島仏壇組合全体で力を合わせてその時出来うる技術を駆使して製作した昭和初期の逸品です。
昭和初期、福島仏壇組合(八女福島仏壇仏具協同組合の前身)は、仕上組合と四種組合(材料部門の木地、宮殿、彫刻、金具)で構成されましたが第三者の名士の方に組合長をお願いした期間があり、昭和8年5月~昭和11年6月まで高橋篤氏が福島仏壇組合の組合長を務められました。
木地は地檜を使用し、ほとんど釘を使わない「ほぞ組」で外三方開六枚障子の豪華な造りです。
宮殿は寺院建築を細部まで再現する御堂造りで全体をバランス良く製作されており、彫刻は「桐に鳳凰」の図柄の木地彫りで材料のひのきを活かした造りとなっています。
金具は地彫りという現在ではほとんど使わない技術で、まず厚い銅板をなまして柔らかくしそれを裏面からたたいて、表面に盛り上がった部分を手作業で彫る気の遠くなるような手間のかかる方法です。
下地は本堅地と思われます。地の粉と砥の粉と水を練り合わせ生漆と混ぜた下地を「本堅地」と言い、八女和紙または麻布を張り、地付けと研ぎを繰り返すことにより非常に堅牢な下地となります。
塗りは蝋色研ぎ出し仕上です。現在では文化財などの修復にしか使用しない国産漆を使用し時間と手間をかけ丁寧に仕上げています。現在でも漆の劣化がみられません。
金箔押しは塗り上がった仏壇に天然精製箔押うるしを擦り付け1枚ずつ丁寧に金箔を施しており見事な仕上がりです。
蒔絵の材料として漆、金粉、銀粉、錫粉、青粉、青貝、梨地粉、截金を使用し、蝋色加工した塗板の上に漆などで下絵を描き、その上に金紛、銀粉、貝などを蒔き、さらに加筆または研出しています。
100年ほど経った今でも、八女福島仏壇ならではの本物が持つ上品な雰囲気は見る者を引き込みます。